2008年5月30日金曜日

つぶやきの中の本音



オタクより先に市民権を得たかった。

漫画家より先に市民権を得たかった。

日本のアーティスト。

最近、そんな言葉がどうも忘れられない。


           (この間のお喋りより)


2008年5月27日火曜日

まんが 考

先日、日本の漫画界のスーパースター、井上雄彦の展覧会「さいごの漫画展」が上野の森美術館で始まった。展覧会初日、美術館前には長蛇の列ができていた。何を隠そう、僕もこの展覧会に朝一に行ってみた一人だったが、列のあまりの長さに日を改めることにしてしまった。たった一年とはいえ、日本を離れてみると、住み慣れた街にいつの間にか取り残されたような錯覚を覚えることがある。俗に言う「浦島太郎」というやつだろうか。僕の場合、この浦島気分を一番感じるのは漫画だった。

日本ほど漫画が浸透した社会は他にないのではないかと思う。それくらい書店には漫画が並んでいるし、何よりその種類に驚かされる。実際、日本の有名漫画がポルトガル語訳されているものもあった。コミックは外国ではあまり価値がないと思われているとよく言われるが、それは本当だと思う。実際、僕が同年代のポルトガル人に英訳の漫画を紹介したが、一切取り合ってくれなかった。英語だったからだろうか。

それは置いておくとして、最近、この一年間に進んだ物語を読むべく、数冊の漫画を買った。その中でも井上雄彦の「バガボンド」はすごいと思った。この作品は吉川英治の「宮本武蔵」が原作となっている。漫画家は一つの作品が長く続く場合、物語が進む中で、作家自身も成長していくわけだ。特にキャラクターに本当に命が吹き込まれていくように最初の頃と終盤では顔つきが変わってきたりする。

この作品はそうした画力もさることながら、キャラクターの感情表現やストーリーの展開もすさまじい。よく、映画を見て泣くというけど、読んでいてそういう感動に近いものを感じる。(泣いてはいませんけど。)

特に「バガボンド」の場合、時代劇なわけだから、もう400年近く前の出来事をよくこんなに細かく描けるものだと思う。造られた世界ではあるけれど、すごい力でもって引き込んでくれる。特にこの漫画ですごいのは武士とか日本の精神みたいな部分をすごく丁寧に描いている部分だ。現代に描かれた宮本武蔵。その世界の中に誰もが自分自身を投影してしまう。

そんな気分にさせてくれる漫画はやっぱり、もう、美術じゃないかと思う。

2008年5月22日木曜日

垣根


 先日、東京芸大では「垣根の内と外」と題した座談会があった。大学の独立後、この大学がどういう方向へ向かって行くのかということを教授陣が話し合うというものだった。タイトルにある「垣根」とは芸大の中の各科(建築科とか工芸科とか油画科とか。)同士の敷居を指している。また芸大という特殊な大学と社会という意味での垣根でもある。特殊と書いたのは、この大学が非常に専門的な技術の習得と伝統という意識に守られた閉鎖的な場でもあるからだ。(こうした問題に対して、近年芸大では近隣の町との連携的な活動も行ってもいます。)


 各科内の専門的な授業が忙しいこともあるのか、学生は普段、他の科との交流が少ない。(芸大に限ったことではなく、他の大学でもおそらく同じだと思う。)そのせいか、壇上に各科の教授がずらりと並んでいる光景は何とも新鮮なものだった。普段、他の科の教授同士が話しているところなどほとんど見たことないだけに。

 座談会なので、議論というほど激しくないものの、時折、科の存続の意義に触れる様な内容もあって4時間近い座談会はあっという間に終わった。科同士の複雑な関係を考えれば、教授たちも言いたい放題というわけにもいかなかっただろう。だが、会の終わりには不思議な充実感が漂っていた。多分、こうした各科同士の話し合いが芸大始まって以来、初めての試みだったからではないか。

 肝心の「垣根」については、いろいろな意見があった。教育上絶対に科という範囲は必要だ。とか「先生方みんな芸大を愛していますね」なんてまとめられもした。そんな中で、外部の有識者が言った「垣根なんて最初からなく、あるとすれば、自分でつくってしまうものではないか」という発言に僕は共感できた。日本の美術の膨大な集積と人を持つ芸大が、そうした財産を、この時代にどうやって横断的に利用していくのかはとにかく難しい問題として残った。
 座談会中、座長から振られた話を自分の在籍する科に限って話している様子は、やはりどこか閉鎖的に見えた。そうしたやり取りの中で他科のやっていることに対する無関心さがところどころに滲んでくる様な気がしたのは気のせいだろうか。「内はこれをやっています」、「内はこうなんです」ということ話が熱くなってくるほど、他科のやっていることは門外漢だから分かりませんし(あんまり興味もないなぁ)という雰囲気はどこかしらけている。そうした無関心さが言ってみれば僕たちの持つ「垣根」と「その外」なのではないかな。そう思った。

2008年5月11日日曜日

五月


帰国後、一月が経った。このブログもポルトガルから帰って来てしまった今、どうしたものかと考えていたところです。ポルトガルでの生活はこのブログを見る限り、やっぱり楽しい一年だったんだな、と改めて思う一方、帰って来てまだ一ヶ月ほどしか経っていないことに驚いたりもする。


今後は身の回りで起きたことや考えたことなど、ポツリポツリと書き留めていこうかなと思っています。