2007年5月27日日曜日

入り口

リスボンの街を埋め尽くす石のタイル。それは迷宮への入り口である。不定形な石が不規則に並んでいく様子は、どこまでも続いていく無限の平面を思わせる。ある一定の規則があるようだが、それが一体どういう規則なのかは、人間の直感だけが知っている。「最も難解な迷宮とは一本の直線である。なぜなら、その道を歩いて行くと、もと来た場所へ戻ってしまうからだ。」古代ローマ人のこの言葉を思い出した。私はリスボンの街をふらふらと歩きながら、いつの間にか目の前に広がるこの石畳に酔った。見慣れた街に、ふと気を許して歩いてみる。空白の思考の瞬間、この歪んだ地面と身体のどこかが、シンクロしていることに気付いた。

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