2007年10月1日月曜日

言葉は壁



 お昼時、事務所の友達と出かけるときはいくつかの注意が必要だ。
まず、かなり体調のいいこと。面子を確かめる事。六人席の場合、必ず四隅のどこかに座る事。
これらはどれを見落としてもいけない最重要事項といえる。
ポルトガルに限らず、母国語と呼ばれるものを持つ国で現地の人が集まって昼食をとる場合、よほどの事がない限り、英語で会話をするという事はありえない。

 何が好きでわざわざ(母国語より)話しづらい言葉を使って、楽しい昼食を過ごさなければいけないのか。

 言語の基礎的な知識がない状態で現地の会話に混ざるのは必要以上に体力を使う。特に普段の会話のスピードに加えて、話題も結構すぐ変わったりするのについていくのは、ほとんど不可能に近い。

 加えて、上に書いた最重要事項三番目の六人席、真ん中に座ってしまった場合、完璧な無視状態に陥ることもしばしばある。(だからといって黙っているわけでもないんだが。。。)もちろん、端に座ったからといって英語で話してくれるような事はないが、そっと会話を聞いています。といった態度でいられるのでいくらか楽だ。


 学生時代にビラ配りのアルバイトをした時、上手く配るコツは「無視される事に慣れる」ことだった。

 私は決まりきった売り文句を艶のない声でもってビラを差し出す。サラリーマン帰宅時間の駅前で、彼らはビラを配る私を無視して通り過ぎてゆく。私は透明だったのかもしれない。声色、ビラを差し出すタイミング、視線、私は懸命にビラを配ってみた。しかし、そのどれも効果を上げることはできず、無視されるという体験に単純にショックを受けた。私はそんなアルバイトになれた頃、同時に無視されることにも慣れたのだと思った。そして、人間が駄目になったような気がしたものだ。


 そして今、「無視されることに慣れる」のではなく、「無視させない」知恵、を私は身につけたのだった。

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