2008年3月11日火曜日

モンテモール・オ・ノヴォ


先月の末に訪ねて来た大学の友人にポルトガルを案内する。彼の滞在最終日は僕もまだ行った事のない土地へ行くことになった。


Montemol・o・Novo(モンテモール・オ・ノヴォ)と呼ばれるリスボンから東へ150キロ程行った所にある町だ。バスに揺られること1時間半、街の中心にある大きな倉庫のようなバス停に着く。外は思ったより少し寒かった。倉庫のようなバス停がつくる大きな影のせいだった。バス停を出ると、日差しが強く、ポルトガルの他の地方都市に比べると、道路幅が広かった。それは古い街並みを残しつつも現代の車社会に少し適応しているといった様子だった。


この街も他のポルトガルの都市と同じように丘陵地の頂上付近に城壁を回し、その裾野に街が展開する構成になっている。


向かうは古い城壁。


途中、道路ど真ん中にだらしなく寝そべる犬を発見。その不用意さが如何にもポルトガルらしくのどかな場面だった。


城壁をくぐると、ほこりっぽい土の道ときれいな緑色に生えそろった草むらが、そよ風に揺られていた。振り返ると、今くぐった城壁が目の前に立ちはだかっており、その大きさとは対照的な小ぶりな階段が脇に添えられていた。やや荒々しい石が雑然と積み上げれたその階段を上ると、城壁腰に裾野に広がる街が見渡せた。その景色はどこまでも続いていく平原に時折、盛り上がった丘陵地があり、見ていると気が遠くなっていく。



城壁は意外に長く、舗装されていない歩行部分は気をつけながら歩かなければ、足をくじいたりしそうなほどだった。遠方に見えていた城壁の端の望楼は途中、道が崩落しており行くことができず、日本ならば必ず手摺があるはずの場所にも、ここではあえて手が加えられてはいない。


僕は足元に気を使いながらも、裾野に広がる街とその背景の広大な平原にどこを見ていいのか戸惑いながら、そよ風に揺られている草むらの方に目をやってみた。それまで、足元を気遣うあまり、その方に注意がいっていなかった。


草むらの向こう側には廃墟となった塔と崩落した壁が小さく見える。城壁の入り口をくぐった時はゆるく盛り上がった丘の張りがこの廃墟を隠していたのだ。強い日差しを受けた草むらは鮮やかに、そして眩しいほど照り返してくる。廃墟はその向こう側に不思議な存在感でもって、建っている。


まるでありふれた楽園のイメージだった。

僕は今すぐその場所に行きたい気持ちを抑えつつ、来た城壁をゆっくり見て入り口まで戻ると、草むらの向こうにその廃墟が見えるまで、その丘を小走りに駆け上がった。


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