2008年3月13日木曜日

ボウサの集合住宅




今頃になって、という感があるが、ポルトにあるボウサの集合住宅についていくつか書いてみたい。僕はこの一年間のポルトガル生活で3回ほどポルトに行ったが、このうち二回はこのボウサの集合住宅を訪れた。


内部にはもちろん入ることができないが、建物の外周程度の見学者のために、一応アクセスを書いておく。ポルトの地下鉄駅、青線Lapa駅降りて目の前。青線は建築通でなくとも知られる、Casa da Musicaの最寄り駅もあるので、この現代建築と合わせて見ることができる。


この集合住宅の概要を簡単に説明しておく。設計者はAlvaro Siza Vieiraというポルトガルを代表する建築家だ。以前もこのブログでいくつか作品を紹介している。因みにこの建築家はポルトを拠点に活動している。
この計画は低所得者のための集合住宅であり、構想から実現まで30年近くかかっている。というわけで最新作ともいえる。この集合住宅は櫛型に配列されており、櫛の部分が住居で背の部分がコンクリートの壁になっている。


僕はこの建物を二回訪れて、二回とも建物の敷地とその外を分けているコンクリートの壁に興味をもった。去年の6月に訪れた時はかなりの豪雨で敷地内の近道用に開けられた通路や共用部分にかかった屋根を移動しながらも、いつも視線の奥にある壁が気になった。

というのはこのコンクリートの壁によって、居住部分が周囲から守られているような印象を受けるたからだ。櫛型に配列された住居は互いに向き合っているが、その間には10メートルほどの広場をはさんでいる。居住者は自宅を出て、この広場を通って外出するようになっている。さらに、壁によって広場は囲われた形になっており、広場部分にはられた芝生は居住者の物といった雰囲気になっている。

壁によって、閉じられたこの広場に入ってくる者は周囲の建物からの「目」を少なからず感じることだろう。


僕は不思議な壁の魅力を体感している気がして、壁伝いを歩いてみる。


すると、正面に壁を見ると分からなかったが、壁には端の方に小さな出口が開けてある。まるで、自分の家から出るようにその出口を出ると開放的な広場の空気はそこにはなかった。地上に出た地下鉄とその電線が土手の上に見えるだけだった。車一台ほどが通る、人気のない道路。


僕はそこに屋根があると気付くと、傘をたたみ、鈍く湿ったコンクリートの壁に沿って少しだけ歩いた。巨大な落書きがコンクリートの壁に描かれていた。

僕はその落書きを見て、何故かこの壁はなくてはならない物の様な気がした。


傘を差し、人気のない道路へと数歩出てみる。まったくの壁だ。なるほど、この巨大な壁にも、いくつか開口があり、通過できるというわけか。今度は来た道と違うところから敷地内に入ると白と紅色と芝生の緑がきついコントラストをつくっている。


もう一度、壁を振り返ると壁の高さは住居の高さに合わせてある事に気付いた。
おそらくは居住環境にできるだけ差を与えたくないというシザの配慮ではないだろうか。

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