2008年1月14日月曜日

壁の意味


バルセロナのスペイン広場に位置するバルセロナパヴィリオン。

建築科の学生でこの建物を知らぬ人はいないほど有名な建物。
何故かと言えば、純粋に壁と屋根だけで構成されたこの建築には一切の無駄や飾りがなく、極限まで純粋性を追求しているからだ。
設計者はMies van der Rohe(ミース・ファン・デル・ローエ)というドイツの建築家。

 僕は教科書で見慣れた建物も実際に訪れてみると、不思議と見慣れた感じがせず、館内をうろうろとしてみる。そして、写真で作られた自分のイメージが如何に本物と違うかという基本的なことを思い出した。しかし、建物の構成は極めて単純なもので、ものの数分で全体が分かる。ところが、なかなか飽きがこない何かがこの建物にはあった。(因みに建物といってもパヴィリオンなので、展覧会用に建てられた一時的なもので、もちろん住んだりするための設備は一切ない。)


 広場に面した大き目の部屋にはビロードの様なカーテンがかかっており、場合に応じて外界と内部を分離できる。カーテンを閉めても、建物端のパティオから採光できるためそれ程、暗くなりそうにない。 このパティオ(写真正面)の大きさが何とも早、写真で見たのと違って、随分と小ぶりに感じたが、実際は程よい大きさだったと思う。

 僕は一枚の水平な屋根の下に建てられた壁が一つの大きな部屋を二つに分けるという単純な美しさのようなものを感じて、その壁の周囲を歩いたてみた。

 正面にその壁を見れば、一つの大きな部屋を視覚的にしっかりと支えており、斜めに見れば、部屋の奥行きがたっぷりと見える。そうした変化が一枚の壁の周りを歩くことで刻一刻と伝わってくる。そして、その壁の厚みの向こう側にもう一つの空間が現れた時、二つに分けられた空気の違いが不意に僕を捉えた。
 その壁は空間を二つに分けながらも、二つは完全に分断されているわけではない。一枚の壁を隔てた反対側でまったく違うことが起こっているかもしれないという予感に、僕はシャッターを切ってみた。

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