2007年6月17日日曜日

 この3日間の旅で、僕が最も気になったのは飲酒運転だと思う。リスボンでほとんど車に乗せてもらう機会のない僕にとって、これほど恐ろしいことはなかった。

 木曜日の朝、リスボンを出発して高速を1時間程走ったところにファティマという小さな街がある。小さなといってもキリスト教徒にとっては重要な聖地の一つなのだが、ここで昼食をとった。注文の最後に、ウェイターはお決まりの飲み物の注文をしてくる。まさかとは思ったが、彼らは何のためらいもなくインペリアルを4人分注文してしまう。

 僕は同乗者がいなければ、飲酒運転をしてもそれほど気にしない。まぁ一杯ぐらいなら、と思うだろう。だけど、彼らが食事中に2杯目を注文したことで焦った。「もういっぱい飲む?」と聞かれてもちろん飲んだけど、内心恐くなった。日本ではやはり飲酒運転は御法度なのだ。

 そして、極めつけは、土曜日の昼食。朝からポルトは霧雨で霞んでいた。ポルトの歴史地区を歩いて回り、雨の強まる気配を感じてレストランへ。案の定、雨は激しくなり降り足を見ながらの昼食はいつになくのんびりとしていた。いつものようにビールを頼み、店の壁にかかっているテレビでは「ザ・シンプソンズ」のアニメをやっている。原色の色がチカチカと動くのはポルトガルの古びて落ち着いた色合いの壁の中で際立って見える。雨が石畳を打つ音に混じって、自動車が店の前の坂を上っていく音が騒々しい。彼らはポルトガル語の字幕を読みながら、旅も終盤に差し掛かり、時折疲れた表情を見せていた。

 そこに、突如やってきた写真のお酒。ベラオン。ポルトガル語ではAの上にアクセントが入ります。
ポルトガルのリキュールらしいのですが、これがかなり強い。ドロリとした舌触りと強い芳香が喉につく。彼らは陽気さを取り戻し、その日の予定を確認したりしている。雨の止む気配はない。僕はこれから回る場所と帰りの高速道路の運転を思い浮かべ、長い午後が不安になった。僕は未だ見ぬ被害者の悲しむ様子を想像し、その一方で楽しい昼下がりを満喫している彼らをうらやんだ。


追記:ベラオンの表記はBeiraoの間違いです。文中にあるようにaの上にアクセントが入ります。

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匿名 さんのコメント...

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