2007年6月17日日曜日

ポルトの歴史地区

 ポルトは朝から断続的に霧雨が降っていた。私たちはホテル近くのカフェで軽い朝食を済ますと、車を置いてこの歴史地区を歩いて回ることにした。起伏の多いポルトはリスボンと違って、密集した建物の間から不意に川が見えることは意外と少ない。
 可愛らしい小さな建物が川沿いにびっしりと敷き詰められている。まるで、限られた椅子を取り合う「おしくら饅頭」のようだ。そういえば、どれも建物は歪んでいる。きっと、川の眺めを奪い合っているんだ。

 川沿いの道では来週の土曜日 6/23の サンジョアン祭に備えて着々と準備が進んでいる様子だ。心なしかリスボンより大掛かりな気がする。歴史的な街に現代的な仮設の音響施設は不釣合いだったが、一週間後の祭りを心待ちにしているのがわかる。

 曲がりくねって、入り組んだ街路はこの古びた街を立体的に見せてくれる。ドウロ河に面した遊歩道を避けて、一段上の歩道を建物沿いに歩くと、ドウロ側をはさんだ景色が何とも言えず、静かな佇まいだ。雨は止んでいたが、湿った空気と、濡れた地面が古ぼけたこの街を一層際立たせている。

 私の印象では、どこか統一感のあった歪な街は、よく見ると渋く深みのある色を随所に持った街だった。あの統一感はきっと屋根の色に違いない。私は自分にとってのポルトが写真によって作られていたことに気付いた。写真の前できれいに整列したようなポルトの街並みは川沿いの等高線に沿っていて、壁のようだ。意外と奥行きのない建物を見た時、私はそう思った。

 じめりとしたこの空気の先をドン・ルイス1世橋がドウロ河を大きくまたいでいる。19世紀後半に出来たあの橋は今となってはポルトのこの街並みに自然と溶け込んでいる気がするのは、長い年月のなせる業なのか。まるで違和感がないのはどうしてだろう?
 
 私はそんな疑問を他所に肌にまとわりつく霧雨が気になって傘をひらいた。

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